大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和37(あ)1495 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人風早八十二の上告趣意第一点について。

所論は、旧地方税法(昭和二九年法律第九五号による改正前のものを指す。以下

同じ。)九二条一項、五項が憲法三一条に違反し、従つて右法律第九五号附則三六

項、三七項もまた違憲であると主張する。

しかしながら、旧地方税法九二条一項、五項が憲法三一条に違反しないことは当

裁判所の判例(昭和二六年(あ)第九九〇号同二九年一一月一〇日大法廷判決刑集

八巻一一号一七四九頁、昭和三三年(あ)第一四一三号同三七年二月二一日大法廷

判決刑集一六巻二号一〇七頁以下)の趣旨に徴して明らかである。そして所論昭和

二九年法律第九五号附則三六項、三七項達違の主張は、右旧地方税法の法条の違憲

なることを前提とするところ、その違憲でないことは右説示のとおりであるから、

この違憲の主張はその前提を欠き、採用できない。次に所論は憲法三九条違反をい

うが、同条にいう「既に無罪とされた行為について刑事上の責任を問われない」と

いうのは、既に無罪の裁判のあつた行為について再び刑事上の責任を問われないと

いう趣旨であり(昭和二三年(れ)第一九六一号同二六年五月三〇日大法廷判決刑

集五卷六号一〇五頁参照)、本件は既に無罪の裁判があつた事件ではないから、右

違憲の主張は理由のないこと明らかである。それ故論旨は採用できない。

同第二点について。

所論は憲法三一条、三八条一、二項違反をいうが、Aの自白に関する部分は、原

審で主張判断を経ない訴訟手続に関する主張であるから、上告適法の理由とならな

い。また、原審の是認した第一審判決が証拠として採用した被告人の自白が所論の

ような事情の下に作成され任意性を欠くものと疑うべき証跡は記録上認められない

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から、違憲の主張はその前提を欠き、採用できない。

同第三点は事実誤認、単なる法令違反の主張であり、上告適法の理由にならない。

弁護人下山四郎の上告趣意第一点について。

国税犯則取締法が刑訴一九八条二項と同旨の規定を有しないことは所論のとおり

であるが、しかしこれがため収税官吏が犯罪嫌疑者に対し質問するに当つて、供述

拒否権のあることをあらかじめ告知しなかつたからといつて、その質問手続が憲法

三八条に違反するものでないことは当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第一〇一号

同二三年七月一四日大法廷判決刑集二巻八号八四六頁以下、昭和二三年(れ)第一

〇一〇号同二四年二月九日大法廷判決刑集三巻二号一四六頁以下、昭和二五年(れ)

第一〇八二号同年一一月二一日第三小法廷判決刑集四巻一一号二三五九頁以下、昭

和二六年(あ)第二四三四号同二八年四月一四日第三小法廷判決刑集七巻四号八四

一頁以下)の趣旨に徴して明らかであり、また記録によるも、本件において被告人

が質問に対して答弁をしなければ刑罰上の制裁を受けるとしてその供述を強要され

たと認むべき証跡も存しないからかかる事実を前提とする憲法三八条違反の主張は

その前提を欠き、所論は採用できない。

同第二点について。

所論は憲法三一条違反をいうが、原審の是認する第一審判決が証拠として採用し

た被告人の所論質問顛末書が所論のような事情の下に作成されたものとは記録上認

められないから、所論はその前提を欠き、上告適法の理由にならない。

同第三点について。

所論は憲法三八条違反をいうが、原審の是認する第一審判決が証拠として採用し

た被告人の自白についてその任意性を疑うべき証跡のないことは、弁護人風早八十

二の上告趣意第二点で既に判示したとおりであるから、所論はその前提を欠き、適

法の上告理由に当らない。

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同第四点について。

所論中判例違反をいう点があるが、引用の判例は事案を異にして本件に適切でな

く、違憲をいう点は、実質上単なる法令違反の主張に帰し、その余は事実誤認の主

張であつて、いずれも上告適法の理由にならない。

また記録を調べても、刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて、刑訴四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

昭和三九年八月二〇日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 松 田 二 郎

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 斎藤朔郎は死亡につき署名押印することができない。

裁判長裁判官 松 田 二 郎

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